歴下亭の「オモシロイからナルホドまで」

古書店・歴下亭(Amazonマーケットプレイス)を営む「本の虫」のつぶやき。本・雑誌・音楽などなどのこと。

連続ドラマ「薄桜記」のこと

毎週木・金曜日は週刊誌関係の仕事で深夜帰宅。それでも金曜夜のNHKBSプレミアム「薄桜記」は録画して必ず観ている。いろんな意味で出色の出来だと思っている。

最初は「居眠り磐音」の二番煎じだろう、くらいのつもりで選局していたのだが、ちょっとというか、だいぶ違った。まず、トータルなイメージだが、「滅びの予感」とでも言ったらいいのか、全編を通じて「どうせみんな死んでゆくんだ」みたいな暗示が常に漂っていることだろう。僕にはそう感じられる。

タイトルの「薄桜記」を念頭に入れて勝手にキャッチを作るとこんな風になる。

<愛した桜も、傷ついた桜も、戦った桜も、ともに短い生を終え、みんな、散る>

でここからタイトルの「薄桜記」に戻ると、このタイトルの秀逸なことがわかる。手前味噌?

だってそうだろう。このドラマの背景が「忠臣蔵」なんだから。毎年に師走になると国民的行事であるかのように、何らかの形で放映される「忠臣蔵」。その結末はおそらく誰も(?)が知っている。そうしたバックにある周知の大筋を前提にしつつ、架空の(かどうか詳しいことは知らない)キャラクターを忍び込ませ、絡ませることでまったく違った物語に仕立て上げた原作者の手腕に敬服するしかないだろう。

 

みんな結末を知っている。大筋でこうなると承知している。「死」に「滅び」に向かって疾走している筋書きの中で、架空のキャラクターの生は、愛はどういう風に終焉していくのだろう…。これが視聴する人の興味の焦点ではないか。

吉良の粋も白竿屋の任侠も、ともさかりえの恋慕も、江守徹のろれつも、まっしぐらに滅びへと向かう群像の絶妙な味付けなのだ。

そしてそして、僕が半分以上は「これが観たくて録画している」のが柴本幸演じる長尾千春。

こんなにも魅力的な柴本幸は見たことがない。(といっても大して知らないのだが)。

特に「目」。丹下典膳を見つめるあのゾクッとする目の魅力は、なんというか筆舌に尽くしがたい。

この女優がいるからまわりの俳優が生きてくる、と(僕的には)思える。あと2回。どんな戦闘シーンが、別離のシーンが展開されるのか、しないのか。ワクワクしつつ金曜日を待ちたい。